今回は勤務獣医師、代診の先生の年収についてお話します。
*院長の収入などは別の機会に・・・。
皆さん、獣医師の給与について、どう思っているのかわかりませんが、
非常に多くの方に言われます。
「獣医さんって給料高いんでしょ?」と。
結論から先に言うと、
勤務獣医師はおどろくほど薄給です。
かわいそうなくらい薄給であり、私ならやりません。
まず、ネットに公表されているデータは一度無視して聞いてください。
ネットに公表されているデータのすべてが嘘だとは言いません。
ただ、不正確で偏ったデータゆえに、信用できないのです。
ここではあえてデータはあげません。
ご自身で『獣医師 年収』とググってみてください。
*母集団が何か、出典は何か、勤務形態、勤務先などを必ず確認してください。
例えば、サラリーマンの平均給与が600万だったり、平均資産が3000万とあったとき、
皆さんはどう思いますか?
多くの人が、「こんなにもらっていない。そんな資産ない」と思うでしょう。
一部の高収入、資産家が平均データを底上げしてるのです。
獣医師にも、企業に勤める獣医師、製薬会社に勤務する獣医師、公務員、牛馬などの大動物獣医師、JRAなどの競馬獣医師、そして、皆さんのなじみのある犬猫などの小動物獣医師などがいます。
さらに、小動物獣医師には、院長と一人前の獣医師、新人獣医師にランク分けされます。
製薬会社の獣医師は非常に高給です。その他企業もサラリーマンよりも高水準といえるでしょう。公務員も資格の分の上乗せ評価で通常の公務員よりも高給でしょう。JRAは大学でも2年に1人就職できるかどうかの超エリートコースですから、高給です。
まず、第一に上記の方々が平均値をかなり多く底上げしています。
NTTやSONY、任天堂や博報堂、電通、トヨタなどの給与、省庁の一流官僚の給与が入ったデータがサラリーマンの平均給与を上げるのと同じ理屈です。
今回は小動物獣医師に焦点をあててみます。
臨床獣医師(わかりやすく言うと、町の動物病院の獣医)は2万人いますが、およそ半分の1万人が院長です。
院長率、高いですね。
ちなみに、人間の医師は約28万人、病院数は8000、診療所等は10万なので、2.6人に1人が院長です。兼任も多いでしょうけど。
院長の給与と、勤務医の給与が半々で統計とられるわけですから、そりゃあ、不正確にもなります。
ここからはK-Vetの感覚的な話になります。
院長の平均年収は800万。(これも1000万と500~600万に2極化しています)
勤務医の平均給与は300万(一般勤務医は350万で、新人獣医師は250万)
といったところだと思います。
推測ですが、長年この業界に携わってきたので相当精度は高いと思います。
おそらくですが、気持ちこの金額を下回るというのが実際かもしれません。
理由としては、
1.私のようなコンサルタントと接点を持つ動物病院・獣医師はそもそも水準が高めの方が多い。なので、実際はもっと低い可能性がある。
2.私は首都圏を中心に電車で行ける範囲でしか活動しないため、地方に行くと、平均年収は下がる可能性がある。ただし、これは一概には言えず、地方のほうが高いケースも多々ある。
もうひとつ、注意です。
ネットで『獣医師 求人』とググってみてください。
いくつかの獣医師の求人データが出てきます。
これは募集をかけている動物病院の求人データですから、ウソではありません。
おおよその相場感がリアルにわかって良いかもしれません。
ただし!
こういったところに掲載している求人データは平均よりも高めであるという点にご注意ください。月ベースで2~5万くらいではありますが、こういったところは福利厚生や手当などが充実しており、その分が破格であることが多いです。結果的に年でいうと数10~100万は高くなります。
理由は
1.人を雇えるくらいの規模の動物病院であり、それなりに経営が順調であるということ。
統計データを思い出してください。2人に1人は院長です。つまりは、ほとんどが院長1人で動物病院を運営しているということです。院長以外に獣医師がいるということは、それだけで中~大規模というカテゴライズになるのです。当然ですが、待遇も高めになります。
2.求人サイトに掲載を出せるほど、経営意識が高いということ。
一般的には縁故採用などが多いですし、実習を通じて、あるいは大学からの紹介でというのが多いため、求人サイトを利用するという選択肢が発想できません。というよりも、ネットを利用するということに疎い院長が多いのです。動物病院のHPやブログなどを見てみると、この時代にもかかわらず、存在していない動物病院のおおいこと・・・。求人サイト利用を思いつくだけで、経営者レベル上級ということになります。当然経営がうまくいっており、高待遇になりがちです。
3.高いには高いなりのワケがある・・・。
ようは求人サイトで募集をかけないと獣医師が来ない・・・。つまり、しょっちゅう人が入れ替わるような動物病院では、条件が良くなります。というより、良くせざるを得ないというか。いつサイトをみても求人が出てる案件です。詳しくは書けませんが。
月給
月給ベースに直します。
新人獣医師(1~3年) 月給20~25万 平均で23万くらいかな?
勤務獣医師(3~5年) 月給25~35万 平均で30万くらいかな?
ちなみに、5年以上は頭打ちであることが多いです。
副院長や分院長などの役職か、専門性による加算(眼科、整形外科、皮膚科など)がない限りは、この給料からあがりません。
福利厚生
健康保険、厚生年金、雇用保険、労災に加入しているかというと、5割くらいは加入していると思います。逆を言うと、5割は加入していないのです。
その場合、『雇用契約』ではなく、『業務委託契約』となり、実質的に個人事業主となってしまいます。当然ですが、国民年金、健康保険は自己負担ですし、失業時の保険もありません。ケガや疾病に対する補償もありません。訴訟リスクも全部自己責任です。
社会保険の半額負担は金額にして大きいです。また、受け取れる年金も、 年金支給額は、国民年金が平均月額で5万5千円、厚生年金は14万7千円 と非常に大きな差となっています。
K-Vet的には、給料うんぬんよりも、こっちの福利厚生の待遇のほうが大きいと思います。
もちろん、5割くらいはしっかりと社会保険加入しているので、これが当たり前というわけではありません。誤解なきよう・・・。しかし、体感で5割くらいはコレ。
手当
ないところが9割です。
残業手当、休日出勤手当、深夜手当などの法定諸手当がないという・・・。
では、実際はどうなのかというと、がっつり月に25日くらいは出勤してますし、1日平均で12時間くらいは動物病院にいるのが普通です。ひどいところは8時~23時くらいが常態化してます。
時給換算するのが怖いですが、当然のように法定最低時給をかるく下回ります。
諸経費
仕事の時間外も『自己研鑽』します。
書籍は1冊平均1万円以上することはざらですし、勉強会に出席すると1万円ちかく飛んでいきます。当然、時給も発生しないので、休日を使ってのこと。
仕事が終わって家に帰ってから・・・。休みの日に勉強会に・・・。
自分の技術や知識、経験が大事であり、自分が商品です。
自分という商品価値を高めるために自己研鑽は必要不可欠なので、これが一生続きます。
どうでしょう?
高給取りだと思いますか?
私個人としては、お金だけ見るなら、コンビニでバイトします。
*コンビニバイトの人、言い方悪くてすみません。
獣医さんとお話をしていると、お金以上の大切な何かのために働いているということを実感します。
決して、高給取りではありませんよ。