痙攣発作とのことで来院

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痙攣は突然に・・・

「急にバタッとたおれてバタバタしたんです!今から伺います!!」

そんな電話があってから、30分後、患者さんが来院されました。

我々からするとよくある症例なのですが、痙攣発作を初めて目の当たりにされる方はびっくりしますよね。

本来であれば、お電話を頂いた段階でいくつかご説明や、注意事項などを伝えるのですが、よほど慌てていたのか、一方的に電話が切れたようなので、状況はよくわかりません。

普通に考えたら「てんかん発作」なのかなあと予想しますが、あくまでも予想は予想。

血液検査、レントゲン検査の準備と、ライン確保用の留置針、抗けいれん薬、グルコース、輸液などなどの準備をしておきます。

自分としては、「ある程度の予想をランキングを付けつつ想定し、かといって先入観にとらわれない」というのが大事だと思っています。

本当に痙攣なのか? 本当に倒れたのか? 本当にバタバタ? そういったことも含めて思い込まないようにしてます。

仮に痙攣だとして、てんかん以外にも、熱性痙攣とか薬物中毒とか色々ありますからね。

仮にてんかん発作の場合、それは「突然に」やってきます。

来院したときのてんかん発作はほとんどが治まっている。

幸いにして、来院時には痙攣発作はおさまっておりましたので、速やかに留置針を設置。

ライン確保して、各種検査を実施いたします。

私は救急医療をする際に、大抵の場合、留置針の設置を最優先の処置として実施することが多いです。

血管確保を最優先し、なにか急変時にすぐに投薬対応ができる状況をつくっておくのが大切だと感じています。

特に、痙攣発作を主訴とする患者さんの場合は、「痙攣発作が起きている最中」は留置針の設置自体が困難になることが多いため、「起きていない今こそチャンス」でもあるのです。

ということで、留置針設置が終了した段階で、自分的には半分仕事終了です。

痙攣発作にも色んな原因がありますが、多くは来院時には治まっていることが多いです。

お電話の段階で、可能であれば、「起きた時間とかをこまめに記録したり、動画の撮影をしていただくこと」も合わせてお願いすることが多いですね。

落ち着かせることと、共感による寄り添いが大事。

ここからは、飼い主さんとの対話を重視しつつ、並行して検査等を進めていきます。

意識していることは、

1.飼い主さんを落ち着かせて、信頼関係を少しでも構築して、しっかりとお話を聞くこと

2.同時並行で検査、評価をしていくこと

です。

1.については、まず落ち着かせることが大切だと感じています。

初めて痙攣発作を見たときの衝撃はすごいものだと思います。

一緒に慌ててはより不安にさせてしまいますが、かといって、冷静に淡々としすぎてしまうと、それはそれで不信感を抱かせてしまいます。

「うちの子が大変なことになってるのに、なんでこの先生は淡々としてるの?シンジラレナイ!!」

と、激昂される方も少なくないので、「びっくりされたでしょう?」とこっちから共感の言葉を言うようにしています。

「冷静でありつつ、ちゃんと共感する気持ちをわすれない」という姿勢を大事にしています。

お互いの信頼関係あっての治療ですからね。

経緯の聞き取りは時系列で、なるべく客観的なデータを拾うようにまとめていき、最後にもう一度確認で整理します。

飼い主さんは、ただでさえ動転し、混乱状態であることが多いので、自分で間違ってしまうこともあります。

あらためて物事を整理して、事実確認をします。

特に、主観と客観を区別することは大事ですね。

慌てていたり、混乱しているとバイアス(思い込み)が発生することがある。

少し話がそれますが、

「さつまいもをあげた5分後くらいに痙攣が起きた」

というただの「時系列上の事実」なのに、

「さつまいもをあげたから、それが原因で5分後に痙攣が起きた」

と思い込んだり、さもそれが確定した因果であるかのように仰る飼い主の方もいらっしゃいます。

「それって貴方の勝手な推測ですよね?」

とは言わず、まずは事実だけをしっかりと把握するように努めます。

*私はその場では否定も肯定も肯定もしないことが多いです。

問診も診察のうち。最も重要な診察です。

2.会話と同時進行で進めます。

これは状況次第ですね。

飼い主さんを落ち着かせることを第一に、正対して集中する場合もありますので、状況次第です。

ちょっと良い方は悪いですが、半分くらいは演出も兼ねてなのですが、「最優先でやってる感」を伝えるようにしてます。

飼い主さんは「また痙攣が起きたらどうしよう。話はいいから、早くなんかやって!」

というように感じてらっしゃる方も多くいらっしゃいます。

「問診」も立派な診察であり、そこを間違えるとすべてがひっくり返ります。

なので、非常に重要なのですが、飼い主さんに気持ちのゆとりがない場合は一概にご理解いただけるとは限りません。

そのため、「やるべきことはちゃんとやってるよ」というアピールのために同時進行でやることを選択することがあります。

「何かをやりながら話をすることも失礼」なのですが、そこは緊急時。

救急医療の名のもとで問題ないのがありがたいところです。

実は撫でながら、見ながら神経学的検査は実施している。

血液検査と、レントゲン検査を実施したかったのですが、ご予算の関係でレントゲン検査は省略。

視診、触診、簡易的な神経学的な検査を実施しながら、評価していきます。

やってる内容も簡単に口に出して言うようにしてます

「ただ犬を撫でているだけ」のように見えて、触診したりしていることは普通です。

「ただ顔を見ているだけ」のように見えて、視診していたりすることは普通です。

「今、自分がなんのために何の検査をしているのか」を適度に呟くようにしています。

最終的に、「問題なさそうっすね」と言ったときに、途中での説明があるかどうで説得力が違います。

せっかくしっかりと診察しているのに、「先生はただ犬を撫でてるだけで、何も見てくれなかった!」となるのは避けたいです。

診断はつける・・・仮であっても!推定であっても!

結論として、おそらくは「てんかん発作」が推定診断です。

余程のことがない限り、診断名はカルテに記載します。

複数候補がある場合は列挙しますが、ゼロはありえません。

ここで、間違っても良いんです。

結果として、誤診であったとしても、それは恥ずべきことではありません。

仮であったとしても、推定であったとしても、診断名を暫定であろうと下すことが大事です。

思考プロセスにもよりますが、誤診はけっして悪いことではありません。

オーナーとの「誤診」に対する認識の違いはあるのは重々承知してますが、それはまたの機会に・・・

対処法等のこれからの説明(プランや対応含む)

飼い主さんには、現状でわかることをご説明し、ご帰宅後に起こりうること、その時の対処を紙に書いてお渡しいたします。

ご説明する中で、大抵の飼い主さんはある程度冷静さを取り戻し、十分に理解はしてくださいます。

しかし、いざ再度、痙攣発作を目の当たりにしたときには、そうとは限りません。

紙に書いてあげることで安心のお守りのような役割にもなり、冷静な対応ができるのではないか?と思い、お渡ししています。

予想しないことが起きたときと、予想の範疇で起きたことは当然ながら気持ちが違います。

ふと冷静になるためのアイテムとして助けになれば、、、と思っています。

なお、夜間救急の場合には、ほぼ今後の治療方針については、言及いたしません。

主治医にご相談くださいといってお返しするようにしています。

実際に自分が治療にあたりもしないくせに「今後はこうやって治療していきましょう」というのは無責任だと感じるからです。

また、一気にいろんなことを説明しすぎると飼い主さんが色々と考えてしまったり、理解が追いつかなくなる可能性を危惧しています。

「まずは、今夜無事に乗り切り、明日かかりつけの先生で受診するまでのことだけを考えましょう! その後のことは、そのときにかかりつけの先生のご指示に従ってください。」

説明することは大事ですが、説明しすぎることは避けるようにしています。

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