獣医師の仕事には、診療がありますが、何も生きている動物だけが診察対象ではありません。
死亡を確認したり、検死(検視・検案・解剖)することもお仕事です。
昨日は、「今朝亡くなったんだけど、さっき動いた気がするので、本当に亡くなっているか確認してほしい」というオーナーが来院されました。
死亡確認
一般的には、院内で亡くなった、あるいは、来院中に亡くなってしまった場合に死亡判定することが多いと思います。
今回のように、明らかに亡くなってから時間がそれなりに経過したあとの死亡判定は稀なケースです。
私の場合は、以下をもって、死亡確認としています。
①呼吸停止(一定時間以上)
②心停止(一定時間以上)
③瞳孔の散大(+対光反射なし)
この中で、特に、心停止は心電図をつけることで、瞳孔の散大は肉眼でオーナーにも視覚的に確認していただけるため、明瞭です。
また、合わせて、心停止に伴う脳への血流停止は深刻なダメージを負うことをご説明する場合もあります。
脳は血流が完全に途絶すると、6秒で代謝異常、2分で機能停止、5分で永続的な障害(死亡)が起こり、死んだ細胞は生き返りません。
3分心肺停止により、救命率は75%、5分で25%と下がっていき、およそ7〜8分経過(人間で言うと、救急車が到着するまでの時間)するころには、ほぼ期待できない救命率となります。
心臓マッサージをすることで、強制的に血液ポンプ機能を働かせ、脳への酸素供給を絶やさないことは非常に重要です。
死亡としての基準を満たしたあと、心臓マッサージなしでおよそ8分経過したら、蘇生不可として、完全な死亡確認としても良いと思っています。
蘇生処置
具体的な手法は割愛しますが、蘇生処置についてはオーナーに実施の有無を確認いたします。
上述の通り、心肺停止から時間が経過していないことが絶対的な条件です。
数分でも経過している場合は、救命率が低いこと、蘇生後に脳への障害が残る可能性をご説明いたします。
心肺停止になるには当然ながら理由があり、多くの場合は基礎疾患を抱えています。
そのため、蘇生できたとしても根本的な問題の解決に至っていないことが多いです。
心拍の再拍動が認められたとしても、しばらくして同様の心肺停止になることが多い気がします。
実施と説明
緊急切迫している状況となりますが、手技は迅速に、並行して十分なご説明をいたします。
どれだけ救命率が低くても、オーナーの希望があるかぎりはできる限界を実施するようにしています。
ペットの最後にオーナーが後悔をしないように、出来得る限り言葉と行動で寄り添いたいと思います。
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