獣医師が考える、犬や猫などの動物病院の選び方

診療ブログ
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ペットを飼育しているオーナーの方は、どのようにして動物病院を選んでいるでしょうか?
様々な動物病院があって、人間も様々です。
正解はありません。
しかし、獣医師の立場から、お勧めの動物病院の選び方を述べたいと思います。

動物病院を選ぶ際の、実際の選定基準と、理想の選定基準

一般に、マーケティング戦略として、顧客動向を調査します。
その際に、ペットを飼っている人に対して、アンケートを取ります。

その際には、
1位 立地(アクセス)
2位 スタッフの人柄・相性
3位 口コミ・評判
4位 獣医療レベル
5位 曜日や時間

となっています。
これは、犬も猫もたいてい共通しています。

アンケートの採り方によって、だいぶ結果は変ると思います。
無記名なのか対面なのか、ヒアリングかシート記入か・・・
項目も、自由記載か、選択肢か、重複を許すのかどうか、などです。

なので、どこまで正確なのかの検証・比較はできません。
漠然と、そうなんだぁ程度にとどめるべきでしょう。

ここで、「料金」が7位だったことをあげておきたいと思います。

20年前は、猫では1位、犬では2位でした。
なお、犬の1位・猫の2位はアクセスだったことを考えると、料金の選択基準がだいぶ回になったことが伺えます。

自分の行動圏内に動物病院がいくつかあるかによって、実際の選定基準は変ってくると思います。
近いところと、遠いところがあるからこそ、それが選定判断になるのであって、1件しかなければ余地がありません。

なので、何で選ぶか、と何を求めるのか、は異なるということに注意です。
そう考えると、実はあまりアンケートは正確では無いということになります。

獣医師が勧める、動物病院の選び方

一番知りたいであろう結果を述べます。

①スタッフへの信頼と相性
②十分な説明と選択し提案があるかどうか
③標準治療がなされているか

この3つです。

獣医師として、これはかなりの自信を持って提案できる選定基準となります。
以下、一つずつ詳細に述べたいと思います。

①スタッフへの信頼と相性

動物病院における獣医療は、法律的には準委任行為です。
獣医療の診療行為は,所有者の依頼により獣医師が承諾することによって実践される一種の契約にもとづく行為(民法第643条に定める《委任契約》とされており獣医療契約もそれに習う)とされています。
 *ホテル・健康診断などは請負契約とされることもある

ざっくりといってしまえば、
『先生、お願いします』
『わかりました。』
でその人を信頼してお任せすることになります。

つまり、『ある程度の信頼関係』がどうしても必要となるのです。

人間ですから、どうしても相性があります。
たいして根拠はなく、信用できないな、どうにも気に入らないな、という相性はあります。

もちろん、堅苦しい言い方をすれば、立派な契約ですから、動物病院側も当然に義務を負います。
しかし、動物の命という代えのきかないものです。
責任は当然に発生しますが、とりかえしはつきません。
金銭で弁済を受ければそれで良しというものではない以上は、お願いするときにリスクは発生致します。

とても失礼なことなのですが、一般の飼い主さんは素人です。
そして、ある程度、動物病院は閉鎖的な状況下にあります。
*環境・状況・情報全てにおいて不可視な部分が多いのですが、それが決して悪いというわけではありません。
したがって、飼い主さんの見識によって、動物病院・獣医師などを判断するというのは非常に困難といわざるを得ません。

より具体的に言ってしまえば、ミスがあっても、一般の飼い主には気付きにくいということです。

獣医学に精通していたとしても、気付きません。
これは、長年獣医師をやっていても、「知り合いが実は無能だった獣医師」に気付かないことがあります。
なので、一般の人である飼い主さんが「獣医師が有能かどうか」を判断することは困難ですし、ましてや、「実際に検査・治療したか」どうかですらわからないでしょう。

これについては、のちに述べますが、とりあえず今は、判断不能と思っておいてください。

さて、ここで重要になってくるのが「相性」というものになります。
動物病院・獣医師が有能かどうか、しっかりと検査・治療をしたのかはわからないと申し上げましたが、「人間性」や「相性」は推してはかることができるのではないでしょうか?

その言動に誠意や熱意、愛、配慮があるかどうか・・・ちょっとしたものの言い方や仕草、振る舞いなどによって、隠そうとしても滲み出るものです。
獣医学的なことはわからなくても、人生の中で、様々な人と接してきた経験から、おそらくは「信用できるか」「自分と相性が良いのか」などはなんとなくわかるのではないでしょうか?

論理的、分析的、感覚的、どういったものでもかまいませんが、飼い主さんご自身が、「この人は良さそう」「信用できそう」「相性良さそう」と思えることこそが重要だと考えます。

色々と基準はあれど、最終的にこれが最も大切です。

契約に伴う獣医師の義務

②③に行く前に、一度ここで、獣医療という準委任契約における獣医師の義務について述べておきたいと思います。
これを知らないと、次の②③の説明ができないからです。

最高に善良なる管理者としての注意義務

法律的には、善管注意義務といわれる有名なものです。
善良なる管理者としての注意義務は、良識ある一般人の成すべき注意義務とされています。
しかし、獣医師等の注意義務は、さらに高度の注意義務が要請されています。

説明義務

民法などの規定や、獣医師法、慣例・判例などから、様々な説明義務があると言われます。
いずれにしても、獣医師は診療した動物の予後について説明する法的義務を負います。

民法第645条

委任契約の受任者すなわち獣医師に、治療について説明義務のあることを明記しています。
*第645条:受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。

獣医師法第20条

診療後の説明義務を定めています。
これは、①療養方法の指導で、食事・運動・服薬等の指導や説明です。

*(保健衛生の指導)
第二十条 獣医師は、飼育動物の診療をしたときは、その飼育者に対し、飼育に係る衛生管理の方法その他飼育動物に関する保健衛生の向上に必要な事項の指導をしなければならない。

他、説明義務-顛末報告

②顛末報告義務です。

顛末報告とは、獣医師が、飼い主に対し診療や治療の結果等について説明・報告することです。

他、説明義務-インフォームドコンセント(説明と同意)

③有効な同意を得るための説明義務です。

獣医師には、飼い主がいかなる治療を選択するかにつき、必要な情報を提供すべき義務があると考えられています。
この情報の内容は、飼い主がペットに当該治療方法を受けさせるか否かにつき熟慮し、決断することを援助するに足りるものでなければなりません。
具体的には、当該疾患の診断(病名、病状)、実施予定の治療方法の内容、その治療に伴う危険性、他に選択可能な治療方法があればその内容と利害得失、予後などです。

一般には、インフォームドコンセントなどと言われます。

転医義務

獣医師は自らの技能では適切な治療が困難と思った時,速やかに転医するよう配慮しなければなりません。

医師には、自らの専門や設備で対応できない場合に、より適切な医療機関へ患者を紹介する「転医義務」があります。
この義務は、患者がより良い医療を受けられるようにするためのもので、これを怠ると医療過誤として損害賠償を請求される可能性があります。
転医義務には、転医先の選定、転医のタイミング、診療情報の提供など、複数の注意すべき点があります。
これは人間の医者の義務ですが、一般に獣医師にも適用するという考えとなります。

1.疾患に対して専門性に欠ける
2.病気の動物の搬送が可能
3.転医先は専門性がある、高度である
4.転医により改善が見込まれること
・・・等が配慮すべき要件とされています。

夜間救急においては、状況を考える必要があり、「この時間で対応できる紹介先があるのか?」などの、時間や場所、移動手段などの現実的な問題を考慮する必要があります。

例えば、深夜の4時に、「MRIをとるのが最適」と思っても、その時間では現実的な選択肢でないこともあります。
こういった場合は、義務を怠ったとは判断されないことが多いです。

②十分な説明と選択し提案があるかどうか

ここで、本題である動物病院の選び方、②に戻ります。

上述の「義務」をしっかり読んで頂いた方ならば、もうおわかりですね?

十分な説明がないということは、獣医療という準委任行為に対して、然るべき義務を果たしていないということになります。

なので、当たり前のこととして『しっかりと説明責任を果たしているか』というのが、動物病院を選ぶ基準となります。

「先生、忙しいから」とかで、無理矢理自分を納得させていませんか?

あるいは、「どうせ聞いてもわかんないから、お任せ」などと、説明を聞くことを放棄していませんか?

理解し、納得がいくまで、わかりやすく説明をし、ご提案をしてくださる動物病院を選びましょう!!!!!

③標準治療がなされているか

だいぶ前半になりますが、

獣医学に精通していたとしても、気付きません。
これは、長年獣医師をやっていても、「知り合いが実は無能だった獣医師」に気付かないことがあります。
なので、一般の人である飼い主さんが「獣医師が有能かどうか」を判断することは困難ですし、ましてや、「実際に検査・治療したか」どうかですらわからないでしょう。

上記を記載したことと、やや矛盾することをお話しします。

標準治療

科学的根拠(エビデンス)に基づいた、利用できる現時点で最も効果的な治療のことを言います。
大規模な臨床試験の結果をもとに専門家が科学的根拠に基づき検討の結果、その時点で治療効果と安全性が最良の治療であるとコンセンサスの得られている治療法を指します。

ここで大切なのは、エビデンスレベルです。
一般的に、『診療ガイドライン』といわれるものが一番信用度が高くなります。
世界標準・グローバルスタンダード、ゴールデンルールと呼ばれるもので、獣医療における最も信頼度の高いものになります。

良く言われる、『最新の知見では・・・』とか『○○といった論文があり、、、』などは、これらの標準治療と比べると、圧倒的に信頼度は低いです。

また、代替医療は正直、エビデンスと呼べるようなレベルのものはほぼ皆無と言わざるを得ません。
*代替医療については別記事参照

EBVM

医学では、その病気の治療を行う際に、その治療が科学的な根拠に基づくものかの有無が必須とされています。
これをEBM-Evidence Based Medicine(根拠に基づいた医療)と呼んでいます。

獣医療にもあてはまります。
獣医学の場合はEBVM(Evidence Based Veterinary Medicine)と呼ばれています。

根拠に基づいた獣医療(EBVM)かの判定は、各分野の改定を続ける獣医学の成書又は専門の学会誌に記載してある治療法がこのEBVMの治療法と判定するのが第1基準となります。
専門の学会誌かどうかは、一般の人には判断が難しいかもしれません。
『成書』と呼ばれるものが最大の基準と言えるでしょう

標準治療かどうかの判別

標準治療がいかに重要であり、スタンダードであるかは述べたとおりです。

実際に、これが正しく行なわれているかどうかの判断は中々に難しいと思います。
しかし、
①検査が行なわれているかどうか
②診断名がついているかどうか
③診断名に対する正しい治療が行なわれているかどうか
ここらへんは、比較的わかることが多いです。

検査がなされずに、診断名がつくことはありえません。
ただし、推定で進めることは非常に多くありますし、それは決して間違っていません。
その場合は、説明を是非聞きましょう!
*多くが対症療法を初手ですることが多いので、むしろ一般的であり、イコール悪ではないことに注意して下さい。

診断名がなく、治療がなされるのは本来はよくありません。
想定している診断名は聞いた方が良いと思います。
暫定で治療を行なうこともありますし、治療の反応を見てから診断をつけにいくことも普通にあります。
したがって、これもイコール悪ではないことに注意です。

診断名がつけば、一般の素人の人でも成書で調べることができます。
必要な検査、治療、予後などがわかります。
それによって、標準治療がなされているかどうかは判断可能となります。

説明は②で述べたので、③の標準治療については、『ちゃんと検査を実施しているか』『診断名を付けているか』に置き換えることができるかなあと思います。

動物病院の選び方-結論

いくつかのことを言い換えつつ、まとめます。

・十分な説明の上で、ご提案頂けているかどうか
・ちゃんと検査しているか
・診断名がついているか
・それらに対して説明と方針が説明・提示されているか
・診断・治療方法は成書に載っている標準治療かどうか
・結果、動物病院への信頼はあり、かつ相性が合うかどうか

こういったところが、判断ポイントかなあと思います。

実際には、なかなか難しいと思います。
フィーリングでも構わないので、最終的に「信用できるか・相性が合うか」で判断するのが良いと思います。

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執筆 K-VET

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